2011年3月10日木曜日

翻訳作業の中間報告

『Pirate Utopias』の第三章を訳している。32〜33ページがおもしろい。
訳したところまで掲載します。



(32)
長い間、アルジェはトルコに併合され、トルコ文化を吸収してきた。イエニチェリたちは、イスラム神秘主義ベクタシュ教団(ワインを用いた儀式を行うなど、いくぶん異端でもある教団)に属し、トルコ的シャーマニズムの特徴を示していた[Birge,1937] 。そもそも、イエニチェリ軍団の有名な行進曲は、イスラム神秘主義が発明したものだ。
 ペレ・ダン(1630年代に捕虜の買い戻しのためアルジェに渡り、名目君主制の歴史を書いた聖職者)は、1634年、コンスタンティノープルから派遣されたアブ・アル=ハッサン・アリを、新しい三年ごとのパシャであると書き留めている。

「街は、彼に敬意を表し、よく整備された2隻のガレー船を送った。
 港では500人の役人が出迎え、彼が上陸する際には、市の砦と40隻の海賊船が放つ1500の礼砲で迎えられた。
 まず、イエニチェリ高官と政府の顧問をつとめる24名のアヤバシ(Ayabashis)が、2人のドラム奏者を引き連れて行進した。ここに、巨大な羽毛でターバンを飾り立てたブルクバシ(Bulukbashis)が2人づつ組になって続き、オダバシ(Odabashis)(6人のトルコ式オーボエと、フルート、シンバルで構成されたムーア人の楽隊)が続いた。この楽隊のアンサンブルは、我々にとっては奇妙な騒音といったもので、喜びよりも強い恐怖を感じさせるものだ。最後に、平和を象徴する白のローブをまとって、新しいパシャがやってきた。
(32)

(33)
彼はすばらしいバーバリー馬に股がり、その鞍、拍車、あぶみ、手綱は、ターコイズと宝石でちりばめられていた。行列は街に入り、パシャのために用意された邸宅まで行進した。」[スペンサー,1976]

 楽隊の奏でる音楽が「我々」ヨーロッパ人にとって恐怖を感じさせる、と言及されているのが興味深い。イエニチェリの軍楽隊が初めて記録にあらわれるのはウィーン攻城戦であるが、このときキリスト教徒の兵士は、軍楽隊の音を聴いただけで恐怖に駆られ逃げだしたという。オジャックの海賊船が軍楽隊を乗せていたかどうかは興味深いところだ(アルジェのイエニチェリは敵船に乗り込み制圧するための兵士として海賊船に乗っていた)。17・18世紀にカリブ海とインド洋で活躍したヨーロッパ人海賊は、音楽が非常に好きでそのための専門の楽士を雇っていたのだが、この場合は、音楽は心理戦の兵器であ
るというよりも、むしろ音楽それ自体を楽しんでいたようだ。(註8)

(註8)
スペンサーはアルジェで聴いたさまざまな音楽について書き残している。
「アルジェの音楽は、主にオスマン帝国の軍隊から生まれた。オジャックの軍楽隊は27人の楽士で構成されていた。ダウル(davul)と呼ばれる大太鼓が8、ティンパニ[ナッカーレ ]が5、らっぱ(bugles)が10、トランペットが2、そしてシンバルが2である。音楽はリズムを強調したスタイルで、オスマン帝国軍の力と華麗さを誇示するものとして、軍楽隊(メフテルmehter)とイエニチェリ軍団によって広められた。もう一つのタイプは、スペインを追われたモリスコによってもたらされたもので、ラウド、タール、レバブ[2弦のバイオリン]や、ネイ[アナトリアのメヴレヴィー教徒が使う半音階の葦笛]といった、東洋の楽器で構成されていた。この頃、アルジェのカフェでは20〜30人のアンダルシア人の楽隊を聴くことができた。
 During the period of the Regency,Andalusian orchestras of twenty or thirty persons could often be heard in Algerian cafes,"playing all by ear,and hastening to pass the time quickly from one measure to another,yet all the while with the greatest uniformity and exactness,during a whole night", as Renaudot tells us.」

ベクタシュ教団

ダウル(davul)

ナッカーレ(nakkare)

bugles

ラウド('oud)

タール(tar)

レバブ(rebab)

ネイ(ney)

メヴレヴィー教徒(Mevlevi)


メフテル(mehter)



第3章は、オスマンやバーバリー地域についていろいろ調べながらやらなきゃいけない。いまわからなくて困っているのは、

Ayabashis
Bulukbashis
Odabashis

の3つ。調べても全然でてこない。調べ方が足りないのだろうが、まあ困ってる。ヘルプミーだ。





おまけ(00年代、反グローバリゼーション運動の一画にあらわれた楽隊)