2011年8月29日月曜日

水分について

 名古屋で開設される「市民放射能測定センター」で、測定ボランティアの養成講座を受けてきた。
 ここで導入されている測定機はNaIという方式で、ゲルマニウム半導体式と比べると厳密さで劣るが、計測値をノートパソコンで自動計算してパッパと出してくれるので、われわれ素人にも扱いやすい。10分間の計測で30ベクレル、90分かければ10ベクレル(核種ごとの検出限界)まで計測できるということなので、大量の品目を短時間でおおまかに見ていくのに適している。

 講座の実習では、野菜をフードプロセッサーで粉々にして、試料のケースにぎゅうぎゅう詰めてという作業を教わったのだが、これがけっこう難しい。ケースの容積にみっちり詰めるといっても、これはちょっと考えこむ作業だ。
 牛乳などの液体はそのまんまでいいのだが、茶葉なんかはどうするのかという問題がある。茶葉そのままだとどうしても空気が入って密度が下がり、粉末にしてぎゅう詰めした場合よりも2割ぐらい数値が違ってしまう。しかしこれはまあ粉砕すればよいのだから、まだ解決できる。
 問題は野菜だ。私が実習で与えられた課題はズッキーニだったのだが、こういうウリっぽい野菜は粉砕すると水分が大量に出てしまう。そうなるとどうしても水分を絞りたくなる。水分を絞っていくと、おそらく数値は上がる。これは静岡県産のお茶が検査されたときに、生の茶葉と乾燥させた荒茶とで数値が大きく変わってしまったことで知られている問題だ。私としては、放射性物質があるかないかをとことん知りたいから、できるだけ水分を絞って密度の高い状態にして測りたい。しかし、実際にズッキーニをカラカラにして食べる人はいないわけで、水分を絞る作業に意味があるのかという疑問もある。ここでいまちょっと悩んでいる。
 
 水分の問題は、土壌調査にも関わってくる。
 土壌調査では、地表面の土を掃き集めるか、地中まで掘ってサンプルにするかで、数値が大きく変わる。これは地表面に放射性物質が多く降り積もっているためなのだが、これに加えて、地中まで掘ってしまうとサンプルの水分率が高くなるということがある。測定されるベクレルの数値は、分母が重量なので(Bq/kg)、乾いた砂と湿った土とを同じ土俵で比較するのはちょっと無理がある。しかし検査機関はそのへんを曖昧にしてくれるので、どういうサンプルであれ数字を出してくれるのが現状だ。
 本当は、Bq/kgという数字の横に、水分率何%と併記しないと、ちゃんと比較できないんじゃないかと思う。あるいは、有機物については水分率○○%、土壌については水分率○○%で測定することとか、そういう規則をつくらないとだめなんじゃないか。とにかくいまの測定方法では、サンプル採取・作成が自由すぎて、いくらでも恣意的な数値がとれてしまう。

 というわけで、いま猛烈に水分計がほしい。これがまた高いんだけどね。

追記
 野菜の測定について考え方としては2つあって、一つは消費者の防護を主眼にする場合、一つは生産者の防護を主眼にする場合だ。生産者の防護は、基本的には土壌調査によっておこなうべきだろうが、それができない場合は生産物を通して間接的に調べることになる。生産者の健康被害を念頭に置くならば、できるかぎり野菜の水分を絞ってカラカラにして測定するべきだと思う。

おまけ


もひとつおまけ

2011年8月20日土曜日

名古屋で反原発


 名古屋の反原発運動の会議(デモの実行委会議)に参加してきた。
 デモは三つのグループにわけて、最後列にサウンドシステムが組まれることになった。
 東京とは違うなあと思ったのは、車が豊富なこと。レンタカーを予約するまでもなく、5台でも10台でも手弁当で調達できてしまう。運転手も、東京では免許所持者が少なくて調整に苦労するが、こちらでは基本的に全員が運転手。さすがクルマ社会の名古屋だ。

 名古屋の反原発デモは9月19日。前の週の11日は、岐阜や四日市などでデモがある。
 マニア的に衝撃だったのは、四日市の「脱原発を訴える四日市市民の集い」。代表は熊沢誠氏。「えー! 熊沢誠って現役でやってんの!」と声を上げた(失礼)。

2011年8月13日土曜日

風評被害について

 京都の送り火に陸前高田市の薪を使うかどうかという問題は、検査の結果、薪からセシウムが検出されたことで、使用しないことになった。(8月12日現在)
 この問題では京都の保存会や放射性薪の危険性を訴える人々に対して、いわれのない誹謗・中傷がくりかえされてきたわけだが、薪にセシウムが付着しているという予測は完全に的中していたわけで、この間「問題ない」と言い続けた新聞社とNPOは土下座して謝るべきだ。

 これは「安全」を主張する者たちが言うのとは別の意味で、風評被害だ。
 いま起きている事態を的確に捉えている者たちと、何も理解していない者たちがいて、事態を見据えている有能な人間を阿呆扱いするとはなにごとか。有効な指摘・予測・プランを、なんの根拠もなく「考えすぎ」扱いしたあげく、まるで有害な意見であるかのように誘導するのは、風評だ。
 これこそ風評被害だ。

 私はこの間、首都圏が低線量被曝地帯になったことを繰り返し書いてきたが、まともに信じない者がいて驚いた。そのあげく、「それはちょっとおおげさじゃ(苦笑)」みたいな態度にでられて、ほんと頭にきてる。
 『現代思想』誌の震災特集(5月号)に書いた文章についても、アマゾンの素人レヴュアーに「くるってる」とか書かれて、もう頭にきた。これは私の欠点かもしれないが、自分より無能な人間に無能扱いされると、どうにも我慢ができない。私は一応アタマのデキの良さ(まあソコソコだけどね)を買われてモノを書いているわけで、根拠もなく阿呆扱いされるのはけっこうなダメージである。真面目にコツコツ文章書いてるのに、混ぜ物して書いてる奴らより信用されないって、どうよ。どうなのよ。

 ま、こんなとこで吠えても仕方ないのだが。
 今日は愚痴だ。

2011年8月11日木曜日

『ヒロシマ ナガサキ ダウンロード』

『ヒロシマ ナガサキ ダウンロード』

在米の被爆者を訪ね証言を集めていくロードムービー。
先月、渋谷の試写会で観させてもらったが、とてもよい。
これから劇場公開が始まるので、ぜひ観てほしい。


2011年8月10日水曜日

篠原雅武×酒井隆史×矢部史郎の鼎談

 いま出ている『図書新聞』(2011-8-13号)で、鼎談をやらせてもらっている。
「生活空間の〈荒廃〉をめぐって」という記事。

 話しているのは、最近『空間のために』を出した篠原雅武氏(都市論・政治理論)、近刊『通天閣』を準備している酒井隆史氏(社会思想・社会学)、昨年『原子力都市』を出した矢部史郎(海賊研究)。酒井氏・篠原氏は、マイクデイヴィス『スラムの惑星』の日本語訳をしたメンバーでもある。
なんだ三人とも『VOL』派の身内じゃないかと思われるかもしれないが、そうではない。『VOL』の同人はそれぞれに研究とか活動とか忙しいので、まともに顔を合わせることはめったにない。実はこうしたかたちでちゃんと話をするのは初めて。場を設定してくれた前瀬くんと須藤くん、ありがとう。

 で、内容だが、自分で言うのもなんだがけっこうおもしろい。空間の〈荒廃〉にいたる歴史的過程を俯瞰するようになっていて、酒井氏が45~60年代、矢部が70~80年代、篠原氏が90年代以降の状況を語って、話がちゃんと絡んでいる。テープ起こしした人がうまいのか、ちゃんとそういうことになっている。なんの打ち合わせもなくいきなり私が京都にのりこんでぶっつけ本番で収録したのだが、意外に話がまとまっているので驚いた。

 このブログではあまり自己宣伝しないようにしているのだが、今週の『図書新聞』は一読の価値あり。おもしろいよ。

2011年8月9日火曜日

放射能防御プロジェクトの会見

放射能防御プロジェクト(Radiation Defence Project)

 全国の土壌汚染調査をすすめている市民グループ「放射能防御プロジェクト」が、首都圏150ヶ所の調査結果(核種分析)を発表。参議院議員会館で会見を行った。ユーストリームで会見中継をみたが、大変な数字が出てきた。詳細はリンク先の表を参照してもらうとして、ポイントは、東京都心部の汚染がベラルーシの水準になってしまっているということだ。

 この夏、茨城県・千葉県からは多くのこどもが転出している。東京都中央区では保育園の待機児童がゼロになった。汚染の実態が明らかになるにつれ、関東からの人口流出は拡大していく。この冬、免疫機能が低下した状態でインフルエンザが流行し、関東脱出はさらに拡大するだろう。

追記
 アワープラネットTVが、会見の映像をアップしてくれた。
http://www.ourplanet-tv.org/?q=node/1192

2011年8月1日月曜日

海賊研究会 番外編

 直前ですが、明日、上京します。
 海賊研究会ではないが、似たようなものに参加します。

 8月2日 16時~
 東大駒場キャンパス 18号館 4階 コラボレーションルーム1
(京王井の頭線 駒場東大前)

 どういう人たちがどういう経緯でやるのかよくわかりませんが、『現代思想』誌の海賊特集の執筆者が何人か出るようです。
 公開の研究会ということなので、海賊研究者はぜひ。