2012年1月12日木曜日

たかが米のために人間を被曝させるな

福島県が馬鹿なことを言いだした。まず1月4日の報道。

 福島県の一部で収穫されたコメ(玄米)から国の暫定規制値(1キロ・グラムあたり500ベクレル)を超える放射性セシウムが検出された問題で、県は2012年のコメの作付けの際に、カリウム肥料を多く与えるよう農家に、技術指導を行うことを決めた。
 カリウム肥料にはイネがセシウムを吸収しにくくする働きがあるという。
 同県では福島、伊達、二本松各市の計9地区31戸(昨年12月30日現在)で作られたコメから規制値超の放射性セシウムが検出されている。県と農林水産省が水田などを調べたところ、コメの放射性セシウム濃度が高いほど、土壌のカリウム濃度が低い傾向があることがわかった。
 財団法人・環境科学技術研究所(青森県六ヶ所村)の大桃洋一郎相談役(環境放射生態学)によると、カリウムは窒素、リンとともに植物の3大栄養素で、化学的性質が似ているセシウムより吸収されやすい。カリウムが欠乏した土壌では、セシウムを吸収しやすくなる。
(2012年1月4日 読売新聞)

 これは昨年の『atプラス』誌上でも指摘した問題だが、再度批判し、注意喚起しておきたい。
問題はおおきく2点ある。

1、カリウム投与によるセシウム移行低減は、商品流通の正常化を優先して、生産現場の土壌汚染を放置し、農家・農業労働者を被曝させる政策である。県は生産者を防護する責務を放棄している。

2、セシウム移行低減は、食品測定の指標となるセシウムを「不検出」にする一方で、汚染の全体(ストロンチウム等の核種の有無)を隠すはたらきをする。これは汚染作物のロンダリングであり、農産物に対する消費者の不信はさらに高まることになる。

 福島県は、作物が商品として流通できるかどうかだけを考えている。それは、大規模な土壌汚染問題に正面から向き合わない、ごまかしの「対策」だ。
 こうした県側の動きに対して、福島の農業団体は対抗的な方針を出しつつある。

 福島県のコメから放射性セシウムが検出された問題を受け、JAグループ福島は、県内のコメに少しでもセシウムが検出された場合、当該農家に今春の作付け中止を要請する検討を始めた。

 JA側は作付けを見送った農家への補償を国に求める考えだが、国は暫定規制値(1キロ・グラム当たり500ベクレル)を超えた地区に限って作付けを制限する方針で、補償が実現するかどうかは不透明だ。

 同県では昨年11月末までに、福島市や二本松市など29市町村で収穫されたコメからセシウムが検出。このため、農林水産省と県が同月から、29市町村の全農家約2万5000戸の調査を始めており、昨年末時点で4840戸の農家のコメ5291点のうち、約20%の1094点からセシウムが検出された。
(2012年1月10日 読売新聞)

 福島第1原発事故を受け、JA新ふくしま(福島市)は11日、土壌の放射性物質濃度を調べる新型測定器の試験を市内のブドウ農園で公開した。新型の測定器は小型で持ち運べるのが特徴。農地の汚染状況を迅速に調べることができると期待されている。
 測定器はベラルーシ製。重さ約5キロで、調べたい場所に置くと、その場の土壌に含まれるセシウムなど代表的な放射性物質の濃度を表示する。従来の機器は、精度は高いが重さが100キロを超す固定式で、土壌の汚染濃度を調べる際には、現場から土を持ち帰って乾燥させるなどの手間がかかった。
 JA新ふくしまは「消費者の信頼回復を進める上でも、農地を広く調べる態勢をつくりたい」としている。
(2012年1月11日 共同通信)

 これが正しい。土壌を調べることが唯一の解だ。
 福島県はさっさと土壌を調べて、必要な退避措置を講じるべきだ。経済のために人間を被曝させるな。