2012年10月29日月曜日

ニューヨーク報告



ニューヨークから帰ってきて、しばらくヒザを養生しながら休んでいたが、土産話を書くのを忘れていた。

ニューヨークでは、いくつかのグループと交流した。
まず、ウォールストリート占拠行動を組織した(というか扇動した)活動家たちのスペースで、放射能汚染問題の報告と討議。
反核運動をしている小さなグループと交流。
ニューヨーク大学大学院で小さな講義。
ハリスバーグ(スリーマイル原発)で放射線観測を継続しているラボを訪問。
出版社AUTONOMEDIAを訪問し、『PIRATE UTOPIAS』翻訳出版の件で挨拶。
そして、先日来日した建築家たちのスペースで、酒を飲みながら交流した。


 日本に帰ってきてまず伝えなければならないのは、アメリカ人はもう「フクシマ事件」を忘れている、ということだ。彼らは放射能問題をほとんど知らないし、汚染が現在進行形であることも知らない。日本の状況に関心を持っているのは、アメリカ在住の日本人だけである。
 よく考えてみればこれは当たり前のことだ。「フクシマ」を忘れること、放射能を忘れることは、日本の国策であるだけでなく、原子力諸国家と国際機関が全力でとりくんでいる世界政策なのだ。


 アメリカの友人たちはウォールストリート占拠の達成感とその後の課題設定で忙しくしていた。言葉の壁があって多くは話せなかったが、「日本の放射能問題は世界資本主義の急所になるだろう」と伝えてきた。彼らが何をやってくれるか楽しみだ。


2012年10月28日日曜日

超チェルノブイリ級




福島の児童の半数以上で甲状腺の異常が確認されている。
頭髪が全部抜けてしまったこどももいる。
年齢にかかわらず、突然死が報告されている。

これまで、IAEAによる事故評価「レベル7」を出発点に、チェルノブイリ事件と今回の事件とを比較してきたが、どうやらそういう話ではないようだ。「チェルノブイリと同等」という先入観は通用しない。状況は私たちが考える以上に深刻で、これまで人類が確認したことのない数値が出てしまっている。

 この1年半、東京を「低線量被曝地帯」と呼んできたが、これを撤回し、修正する。東北・関東の住民の被曝線量を、「低線量」とみなす客観的理由がない。
おそらく超チェルノブイリ級の放射能汚染がある。
上限の見えない被曝被害を想定しておいた方がいい。
 

2012年10月1日月曜日

『ピラテ・ユトピアス』日本語版


 ピーター・ランボーン・ウィルソン(a.k.a ハキム・ベイ)の『PIRATE  UTOPIAS』について。

 海賊研究会の菰田くんが、日本語版を完成させてしまいました。
この訳文は海賊研究会で合評・検討をしたあと、本にして出版する予定。

 私はあす朝の便でニューヨークに行くので、2週間の滞在中に著者ウィルソン氏に会い、日本語版序文を依頼する予定。

 東京電力のせいでずーっと先延ばしになってましたが、とうとう出ますよ。
全国の海賊研究者のみなさん、お楽しみに。



補足説明
 ところでなぜ海賊なのか。
なぜこのブログは『原子力都市と海賊』なのか。
ということが自分でもよくわからなくなっていたのだが、菰田訳『PIRATE UTOPIAS』を読んで、かなり腑に落ちてきた。なんか、わかってきた。

 『PIRATE UTOPIAS』で描かれている海賊伝説は、近代(近世)の地中海世界を舞台にしているのだが、ここで物語の主役をはるのは公式の世界史では描かれない人々である。ヨーロッパを追われた難民たち、にせムスリムの成り上がり、キリスト教・ユダヤ教・イスラム教それぞれから生み出された異端の宗派、千年王国思想、たんなる犯罪者、復讐者、社会の敵。この詳細な解説は翻訳者が書いてくれると思うのであまり出しゃばったことは書けないが、『PIRATE UTOPIAS』とは、彼ら歴史の泡屑となったはみ出し者たちが、どのようにして大西洋時代の思想を準備していったかという物語なのである。
 私はこの一年半の間に放射能難民となり被曝者にもなったわけだが、ここで思想として問題となってくるのは、いま私が抱いている憎しみ、悲しみ、復讐心、非和解性、自由、つまり泡屑が抱くさまざまな情動が、次代の思想をしっかりと準備できるかどうかということである。だから私にとって海賊研究というのは、たんなる伝説(歴史)の問題ではなくて、現在の思想の力学に関わる実践的な問題なのである。って頭おかしいだろ。クレイジーだろ。でもきっとピーター・ランボーン・ウィルソンはわかってくれる。いい感じのハーブをまわしてくれるはずだ。